第4回 大阪で種を蒔く

出版社アールエヌプレスがお届けるニュースレター(隔週土曜日)。編集部の様子と、おすすめの本などを紹介していきます。
rn press 2022.09.03
誰でも

今週の編集部

とあるスジから「中学生と哲学の対話ができる」と聞きつけて、企画の種蒔きをするべく兵庫県西宮市に行ってきました。久しぶりに哲学のことを真剣に議論したりして、とても楽しく貴重な時間を過ごせました。「Dasein」とか大学以降声に出していなかったので、久しぶりに発語しました(笑)。

夜は「大阪の父」的な方と会食。とても美味しいご飯屋さんを知ることができました。翌日は『美味しんぼ』に登場するこんぶ土居の出汁を買うべくシェアサイクルで大阪を爆走。

開店前のtoi booksさんの前で磯上さんにじんわり湿った念を送り、そのまま天王寺のスタンダードブックストアに一瞬顔出し。帰りの新幹線で読む用のウンベルト・エーコの『ヌメロ・ゼロ』を買い新大阪へ。ちなみに行きの新幹線ではピーター・スワンソン『アリスが語らないことは』を読了。務台夏子さんの翻訳が読みやすくて大好きです。

帰郷後は、今日マチ子さんの台湾での展覧会での追加受注分をあれこれ手配したり、新しい書籍の企画書を書いたり、そして断念したり。書かねばならない原稿を抱えて現実逃避する日々を過ごしています。

キャットウォークのポッドキャストをアップしました

佐々木充彦さんが東京にいらっしゃったときに、ポッドキャストを収録しました。聞き直すと私ばかり話していて悲しくなりましたが、佐々木さんのお人柄を感じてもらえるのではないかなと思います。相変わらず音質は最低で、聞き取りづらいコンテンツで恐縮なのですが、一緒にそこにいて、お茶でもしているつもりで聞いてもらえたら幸いです。

USOの原稿拝受

毎年、読者の方からUSOを読んだ感想をメールやハガキをいただいています。いただいたメッセージは「読者の窓」というコーナーで一部をご紹介させていただいています。今年も熱のこもったお便りをいただきとても嬉しいです。個人誌のような佇まいではじめたUSOが、全国の皆様に届いていることを実感します。

そして今回の執筆陣のみなさまからも原稿が届き始めました。今回は漫画家さんが少し多めに参加しています。とはいえUSOは「嘘が面白ければアウトプットの形はまったくこだわらない」ので、文章を寄せてくださる漫画家さんも多くいらっしゃいます。

クリエイターさんにとって、思いを伝える手法はさまざまあっていいのではないかなと思います。漫画家だから絵でしか表現しない、小説家だから文章でしか表現しないのではなく、せっかくツールも進化してきているのですから、なんでもやってみる、というのがいいのではないかなと個人的には思います。

出版社の仕事を知りたい方

rn pressではインターンやアルバイトは募集をしていませんが、9月に入りインターン希望の方から複数ご連絡がありました(学生さんはそういう時期なのか?)。「rn press=野口理恵」という仕事のやり方なので、なにかお仕事をお願いすることはあるかなあと逆に考えてしまったのですが、編集業務は暗黙知なところがあるので、今後の出版文化のためには形式知、共有知とするのがよいのであろうと思います。

幸い私は書籍、漫画、雑誌、WEB編集を経験し、自分で企画し、人をアサインし、取材し書いてCMSにアップし、アナリティクスもみたりする全方位型編集者で、営業はやや弱いけれど、海外版権、流通小売までひとりで見ているので、出版を知りたい人にとっては何かお役に立てるかもしれません。どうせ教えるのなら一人も二人も同じなので、ご興味のある方はメールやDMなどをください。特に費用はかかりません。交通費は実費で。赤ペンとメモ帳があればなおよし。

ちなみに、こんなことをいうと他の編集者に怒られてしまうかもしれませんが、編集者は忙しいふりが得意です。しかし実際のところ忙しいのは校了前後だけで、編集者というのは普段は映画を見たり本を読んだりしている、ちょっとだけ働いている高等遊民みたいな生き物です。私も今週は月曜朝9時からふらふらとジョーダン・ピールの『NOPE』を観たりしているので、武蔵野近隣の方からは「あの人、仕事しているの……?」と思われているはず。

家具はどこに置こうか、図面を眺めるだけでも楽しい。我が家にも反映したい……。『茨木のり子の家』(平凡社)より

家具はどこに置こうか、図面を眺めるだけでも楽しい。我が家にも反映したい……。『茨木のり子の家』(平凡社)より

猫店長のおすすめの本

もうすぐ秋ということで、家でゆっくり読書をしたいですよね。そんな方に、まずは「家」を考えるところから。

今週の猫店長のおすすめは名著『茨木のり子の家』(平凡社)です。この本では、茨木のり子自身が設計した家やインテリア、庭が見られるのはもちろん、蔵書、食器、自筆原稿、日記なども掲載されています。モダンな建築で、棚や椅子など、ひとつひとつについ魅入ってしまいます。

ああ、こんな家でゆっくり読書したい……。

茨木のり子さんのプロフィールはいわずもがなですが、

茨木のり子 1926年、大阪に生まれる。帝国女子医学・薬学・理学専門学校を卒業し、薬剤師免許を取得。文学にも強く関心をもち、読売新聞社の戯曲募集に応募。佳作に選ばれる。その後、言葉の勉強のため詩の世界に入る。同人誌『櫂』の立ち上げメンバーとなり、独特の表現力と感性で、2006年に亡くなるまで、詩を書き続けた。

2006年に亡くなるまでの半世紀を過ごした家は、武蔵野市のお隣、西東京市(東伏見)にあります。現在は甥が管理し、地元の文化的財産として残すべく「茨木のり子の家を残したい会」という活動もあるそうです。

ちなみに話は変わりますが同じく東京の新宿区中井には林芙美子記念館もあります。東京・新宿区でも自然を感じられる本当に素晴らしい場所なのでぜひ行ってほしいです。東京には〇〇の家がたくさんあるので、秋は文学散歩がよいかもしれません。

書籍カバーはトレーシングペーパーに。表紙が超絶綺麗で悶絶!!!

書籍カバーはトレーシングペーパーに。表紙が超絶綺麗で悶絶!!!

次回は9月17日更新です。

2週間ごとにニュースレターを書いていると、時間が過ぎるのがあっという間で切なくなります。次号をお届けするころは、いま私を苦しめている原稿地獄から解放されているはず……。次回、健やかな気持ちでお届けできたらと思います。

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