第1回 校了の次の日

出版社アールエヌプレスがお届けるニュースレター(隔週土曜日)。編集部の様子と、おすすめの本などを紹介していきます。
rn press 2022.07.23
誰でも

<rn pressより新刊のお知らせ>

2022年8月8日、佐々木充彦さんによる『キャットウォーク』を発売します。現在、サイン本をお取り扱い予定の書店はこちらです。お近くにない場合は、オンラインでもご購入できますのでぜひご利用ください!

<今週の編集部>

新刊『キャットウォーク』ですが、色の微調整、うっかりミス、文字の見落としがないか確認・調整をして、デザイナーさんのところで最終確認をして昨日校了しました。

ちなみにこの本では、しおり2種をつくっています。昨年の今日マチ子さんの『Distance』、今年の『Essential』でもしおりをつけたのですが、rn pressではカバーの余り紙でしおりつくっています。書籍のカバーは実際のサイズよりも大きめの紙で印刷し、トンボにあわせて断裁します。そうすると余白部分は無駄になってしまいます。断裁分はかなりの量になるのですが、使い道もなく、ただ廃棄されるだけなので、rn pressではしおりとして利用しています。カバー同様4C印刷でPP加工もされていますのでとっても丈夫で、数種類作ることもできるし、資源の無駄も削減できておすすめです。他の出版社さんもぜひやってみてはいかがでしょうか。

また、今回は↑のサイン本特典として、大きめのキラキラシールを作りました。けっこう大きいです。オンラインストアと↑の一部書店さんだけの特典で、 先着300部限定です。レアシールになること間違いなしです。

会社相談役のうなぎ(猫)です。

会社相談役のうなぎ(猫)です。

しかしながら、校了の翌日というのはだいぶ気が抜けてしまい、会社相談役は目の前でこんな感じ↑で茹で上がっているし…、と、なかなかやる気が出ません。本屋さんはオープンしていますが、お向かいのパイ&タルト屋さん買った超絶美味のアイスラテをすすりながら、この原稿を書いています。

版元の編集者は複数の企画を抱えている方が多いので「腑抜けたことを言ってるんじゃねえ!」とお叱りを受けそうですが、米粒程のキャパシティしかない私には1冊入魂が精一杯です。みなさん、しっかりタスク管理してテキパキと仕事をこなしているのだろうなあ…、偉いなあ…、私にはできないなあ…、会社員ってすごいなあ…、と尊敬の念を抱きながら暑さと過労で茫漠としています。寝ぼけた頭で深夜〜早朝に来ていた編集の先輩W林Kさんからの「韓国ドラマのウ・ヨンウがいかに面白いか」という連投メッセージの返信をしたりしています。

校了すると編集者の仕事は終わりと思われがちですが、この後は献本、発送、プロモーション、サイン本作り、プレスリリース作りなどの仕事が残っています。rn pressは一人しかいませんので、経理、著作権関連の法務、海外への売り込みなど、まだまだ1冊の本でやることは山盛りです。もう少し、いや、まだまだがんばります。

校了がうれしくて撮影したスカイツリー。今回はデザイナーさんの浅草の事務所で校了しました。

校了がうれしくて撮影したスカイツリー。今回はデザイナーさんの浅草の事務所で校了しました。

<今日マチ子さんセミオーダー複製原画まもなく仕上がり>

今日マチ子さんのセミオーダー複製原画の高精細プリントが上がってきました。今回も本当に美しい仕上がりです。このプリントに今日マチ子さんの直筆サインを入れて、額装会社さまに綺麗に額装していただき、箱詰めをして発送いたします。弊社(武蔵野市)から8月10日ごろ発送予定です。仕上がりまであと少し。オーダーされた方は楽しみにお待ちくださいね。

<『USO4』の制作が始まっています>

「あなたの嘘を教えてください」というコンセプトの文庫サイズの文芸誌「USO」は、4年目を迎えました。毎回さまざまな方にいろいろな嘘についてご寄稿いただいています。制作中と言っても、昨日まで『キャットウォーク』を作っていたので本格始動は今日からです。今回の特集は「YES」。できもしないのに思わず「はい」と言ってしまったこと、ありますよね…。「YES」には「肯定」の意味もありますので、そのあたりもどなたかが執筆するかもしれません。今回もエッセイ、小説、漫画が収録されます。今回もすでに『USO3』のご感想をたくさんいただいているのですが、引き続き、読者投稿もお待ちしています。面白い嘘をお持ちの方はrn pressまでメール(info@rnpress.jp)をくださいね。

<今週の猫店長モリオのおすすめの本>

rn pressが運営するRIGHT NOW BOOKSTANDより、猫店長がおすすめの本をご紹介します。今週はフランスの作家ミシェル・ウェルベックが書いた『ショーペンハウアーとともに』(国書刊行会)です。ウェルベックは詩人だけでなく、ミュージシャン、映画人と多様な顔を持つフランスを代表する作家です。そんな彼が哲学者ショーペンハウアーについてまとめた書籍です。

ドイツの哲学者というと、カントやヘーゲル、ニーチェが有名ですが、アルトゥール・ショーペンハウアー(1788年2月22日 - 1860年9月21日)をご存知でしょうか。彼が生きた時代は、だいたいヘーゲル(1770年8月27日 - 1831年11月14日)と同じ時期です。ショーペンハウアーはヘーゲルと同じベルリン大学で教鞭をとりますが、当時からヘーゲル先輩の講義は大人気。ライバル心メラメラのショーペンハウアーは無謀にもわざと同じ時間に講義をぶつけたりしますが、案の定、無名のショーペンハウアーの授業はガラガラです…(涙)。

本というのものはすぐに読まずとも、書棚の隙間を埋めることができるし、教養ある女性のテーブルを飾ることもできる。私がお勧めするのは、この本を批評することだってできる。
『笑うショーペンハウアー』(白水社)

ショペンハウアーは、本は空いてる本棚の隙間を埋めるために挿しておけばいいし、置いてあるとなんだか頭が良さそうにみえるでしょ? というような感じでとっても皮肉が効いています。哲学者というとお堅いイメージがありますが、ショーペンハウアーはいかにも人間くさくて、偏屈ジジイっぷりが店主は大好きです。

そして本書の著書であるウェルベックもちょっぴり、いや、かなり変わった人…。ウェルベックがショーペンハウアーについて書いているなんて、それはもう楽しいに決まっています。

下記は版元さまのページより引用ーー

本書『ショーペンハウアーとともに』は単なる注釈書ではない。一つの出会いの物語でもある。二十五から二十七歳のころ――つまり、一九八〇年代半ば――ミシェル・ウエルベックは、パリの市立図書館でほとんど偶然に『幸福について』を借りた。「当時、私はすでにボードレール、ドストエフスキー、ロートレアモン、ヴェルレーヌ、ほとんどすべてのロマン主義作家を読み終わっていたし、多くのSFも知っていた。聖書、パスカルの『パンセ』、クリフォード・D・シマックの『都市』、トーマス・マンの『魔の山』などは、もっと前に読んでいた。私は詩作に励んでもいた。すでに一度目の読書ではなく、再読の時期にいる気がしていた。少なくとも、文学発見の第一サイクルは終えたつもりでいたのだ。ところが、一瞬にしてすべてが崩れ去った」。衝撃は決定的だった。若者は、熱に浮かされたようにパリ中を駆け巡り、『意志と表象としての世界』を見つけ出す。それは、彼にとって「世界で最も重要な書物」となった。そして、この新たな読書はさらにすべてを「変えた」。私の知る限りでは、いかなる哲学者もアルトゥール・ショーペンハウアーほどすぐさま心地よく元気づけてくれる読書を提供してくれる者はいない。「書く技術」の問題ではないし、この手のジャンルに見られる饒舌でもない。それは公衆に向って発言しようというほどの勇気をもつ者ならばあらかじめ同意書にサインすべき前提条件のようなものだ。『反時代的考察』第三篇は、ショーペンハウアーを否定する少し前に書かれたものだが、そこでニーチェは、この哲学者の深い誠実さ、廉直さ、正直さを賞賛している。ショーペンハウアーの声の調子、その一種の粗野な善良さについて名調子で語り、それを読めば読者は名文家や文体に凝る連中に対して嫌悪感を覚えるだろうと述べる。これこそ、広い意味での本書の目的である。(本文より)
『ショーペンハウアーとともに』(国書刊行会)

ウェルベックがショーペンハウアーによる「元気が出る悲観主義」の精髄をみずから詳解するという意欲作。造本も素敵ですので、ぜひ今夏、読まれてみてはいかがでしょうか。

<次回は8月6日更新です>

隔週更新の「猫と武蔵野とアールエヌプレス」ですが、次回更新は8月6日を予定しています。次回配信の頃は『キャットウォーク』の見本が刷り上がっています。印刷所さん、製本所さん、がんばれ…! ということで、今週のアールエヌプレスでした!

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